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[子どもと向き合うために- MSN-Mainichi INTERACTIVE トピックス]
2005年05月18日 (水) | 編集 |
[子どもと向き合うために- MSN-Mainichi INTERACTIVE トピックス]

 毎日新聞が連載している、児童虐待に関する記事です。リンク切れになった場合を考え、“続きを読む”以降に全文を転載しています。
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子どもと向き合うために<1> 「虐待って何?」 (5/2) - MSN-Mainichi INTERACTIVE トピックス

子どもと向き合うために<2> 虐待に気付くには (5/09) - MSN-Mainichi INTERACTIVE トピックス

子どもと向き合うために<3> 虐待された子どものケア(上) (5/16) - MSN-Mainichi INTERACTIVE トピックス



子どもと向き合うために<1> 「虐待って何?」

 「私もわが子を虐待しそう」と不安になっていませんか? あるいは「虐待なんて自分とは無関係」と思っていませんか? わが子を虐待する親たちは、自分の虐待に気付いていないことさえあるのです。

 子どもの心のケアをする「さいとうクリニック」の太田真弓院長(39)に、虐待とは何か、どうしたら子どもと向き合えるのかを聞いていく。

──虐待とは?

 殴る蹴るなどの暴力だけが虐待ではありません。虐待には、身体的虐待、ネグレクト(育児放棄)、性的虐待、心理的虐待があります。

 暴力を伴う身体的虐待が、一番分かりやすいですが、これもたんに殴る蹴るというより、骨折するほど殴ったり、乳児を壁に投げたり、といったひどいものも少なくありません。子どもが自分の思った通りにならないと、急に火が付いたようにかっとなって、自分で暴力を止められなくなるのです。

──ネグレクトとは?

 衣食住に関わることを与えない、教育の機会を与えないといったことです。例えば、必要がないのにミルクを薄めて飲ませる、同じおかず、栄養の偏ったおかずを1品しか作らない、などもネグレクトにあたります。

 また、「安全のネグレクト」もあります。例えば、病気なのに病院に連れて行かない(医療ネグレクト)、子どもを家にほったらかして外出し火事になった、ベビーカーに子どもを乗せたままスーパーの入り口に放置して誘拐されたなどです。このようなものは事故や誘拐として報道されますが、実際には親の配慮不足や、判断の甘さが原因にあるため、ネグレクトと認知する必要があります。

 ネグレクトは、虐待したという意識がない母親も多く、見過ごされやすいのです。

──心理的虐待とは?

 「アホかお前」など言葉でけなす、恥をかかせるなど、冷たい態度をとるもの。また、子どもの年齢では到底できない難しい勉強や家事を要求して、わざと罰を与えるケースもあります。家から出さない、人と会わせない、子どもを無視する、なども十分に虐待にあたります。

 親の夢を押し付けるのも虐待です。たとえば、「お受験ママ」や「ステージママ」ですね。中には、自分が思った通りにうまく行かないと、「お前なんか生まれなきゃ良かった」などと非難する親もいます。これらは、身体的虐待などと併発しているケースが多いです。

──性的虐待は?

 性的虐待は、ほかの虐待とだいぶ色合いが異なりますね。甘い言葉を掛けられながら、性的なことをされるので、子どもにとっては心の持って行き場が難しく、「自分のせいで」「自分が汚い」と思ってしまいます。

──虐待の背景にあるのは?

 こういったことが起こるのは、少子化も背景にあると思います。昔は子どもが多くて、一人に構っていられませんでした。しかし、いまは子どもが少ない上に、昔よりも家事の手間も楽になり、子どもの行動がいちいち目に付いてしまう。子どもは思う通りに動きませんから、イライラしてしまうのです。

 また、育児書を読みすぎて、マニュアル化してしまう人が増えているようです。「子育てはこうあるべき」という意識が強く、それを子どもに押し付けてしまう。「この場面は叱るべきか」など、すぐに悩んでしまい、どうするべきか、答えが出ないと不安になってしまうのでしょうね。

 「子どもって、こんなもんだ」「予想外のことをするもんだ」と、のんびり構えていくようがいいですよ。子どもの特性はまちまちですから、それを受け入れる気持ちが大切です。

──子育てが下手なだけか、虐待か、判断が難しいですね。

 そうですね。身体的虐待などは、明らかに殴ったりしているので本人も気付きますが、ネグレクトや心理的虐待だと、親本人も気付いていない。

 子どもに何か症状が出て、やっとクリニックに連れて来るのですが、それでも「私はちゃんと衣食住も与えてるし、育児もしてるんです」「私は虐待していないのだけど」という親が多い。しかし、様子を見ていると、本人は気付いていないけれど、言葉でののしっていたり、子どもを無視したりと、何らかの虐待をしているのです。

 こういった虐待が行われていることに気付くことは重要です。それは、母親を罰するためではなく、母親へのケアを始めるきっかけとして、そして再発の防止のためにです。(つづく)【聞き手・野口美恵】

子どもと向き合うために<2> 虐待に気付くには

 自分がわが子を虐待しているのに、気付いていない親は少なくないという。ゆえに家庭という密室から、静かな虐待は表面化しにくい。親も周囲も虐待に気付くためには、まず、虐待されている子どもの症状や特徴を知ることだろう。「さいとうクリニック」の太田真弓院長(39)に聞いた。

──受診する子には、どのような傾向がありますか?

 問題行動が多いです。万引きをする子も多く、私はもう驚かなくなりました。暴言を吐いたり、暴力をふるったり、落ち着きがなくてじっとしていられなくて、学校の授業中などは、隣りの子につばを吐くとか、消しゴムを切り刻んでまき散らすとか、周囲の大人の手に負えないんです。

 孤立する傾向も高く、人の輪に入れなかったり、集団でいても無表情になってしまう子もいます。

──虐待を受けた子には、どんな症状が出ますか?

 症状はさまざまですが、「解離」といわれる状態がみられることが多い。これは、感情や感覚がなくなり、遠い目をしていたり、人の声が遠くに聞こえているような状態です。ひどいと記憶が無くなったり、多重人格に発展したりします。

 授業中に「解離」していて記憶がないということもあり、学習にも支障がでてきます。また、良い成績を取って親の期待を受けた後に成績が落ちると、また暴力を受けるのじゃないかと不安になるので、わざとほどほどにしか勉強しない子もいます。

 また、虐待を受けている子どもにとって一番恐いのは、親の怒りが満ちていく段階です。そんな時は、「早く終らせたい」という気持ちが無意識に働き、わざと大人を挑発して怒らせたり、大人が手を挙げると避けずに向かっていったりします。

──ほかに被虐待児の疾患は?

 おねしょ、おもらしが多いのが特徴です。小学生になって、トラウマやストレスが原因で夜尿が再発する子もいます。

 子供の不安が強くなります。特にネグレクトでは漠然とした不安が強く、布団に入ると急に「穴に落ちちゃう」などと不安がる子もいます。

 また、人の注意を引こうとする行動として、積極的なタイプの子は暴力や反抗をします。消極的なタイプでは、急にどこかに隠れて探してもらおうとする子もいます。

──親にも何か問題はあるのですか?

 受診に来るのは児童ですが、その親に疾患があるのは半数ぐらいです。神経症や適応障害45%、PTSD(心的外傷後ストレス傷害)35%、うつ病15%と続きます。

 重い疾患はなくても、配偶者から暴力を受けていたリ、児童期に虐待を受けていたなどの問題がある母親が多い。

 このような親たちは、概して対人関係が苦手です。幼稚園の保護者会などの親同士のつきあいでちょっとした苦労をしたりすると、被害妄想的になってしまい、「自分はだめだ」とか「母親として失格だ」などと考え、子育てをつらく感じてしまうこともあります。

 それで普段は、自分はわが子を殴ったりしていて、子どもを愛せないのではないかといった罪悪感があるから、逆に過度に愛情を注いで、子どもに過干渉になってしまう。子どもが思った通りにならないと、急に感情を爆発させてしまう。愛情を注ぐのが上手にできないんです。

 子育てを始めてから、自分の子どものころ虐待されたことを思い出してしまう人もいます。「自分は、こんなに愛情を注いでもらえなかった」から始まり、愛情を注ぎ過ぎるのと、悔しくて愛情を注ぎたくないのと、その葛藤で虐待を繰り返してしまいます。(つづく)【野口美恵】

子どもと向き合うために<3> 虐待された子どものケア(上)


 虐待を受けた子どもでも、心を開く場を作ってあげれば、それがケアにつながる。「さいとうクリニック」の太田真弓院長が、実際の治療例をもとに、被虐待児のケアについて話した。太田院長が話した講座での質問とその回答も紹介する。

──クリニックではどのような治療をするのですか?

 被虐待児は発達に問題があることが多いため、まず知能テストをします。言葉の理解力を示す「言語性」と、視覚的な情報をまとめる能力の「動作性」の2つの数値がでます。被虐待児では2つの値に差が出ることがあります。これは、能力の発達にばらつきがあることを意味します。

 例えば、母親が口うるさく叱ってばかりで、自分では何も意見を言えなくなってしまった子のケースでは、相手の言葉を理解できなかったり、自分の意見を言えないといった「言語性」が低くなっているのに、怒られるという雰囲気を感じ取るといった「動作性」は高くなっています。

 こういった子は、全体の知能が低いわけではないので、言葉で考える力か、場の雰囲気を読む力か、能力が補いあって普通に生活できる。特定の知能指数が低く出たとしても、改善は可能です。被虐待児の知能は、学習や治療によって上げていくことが出来ます。

──(参加者)子どもと親を一緒にケアすると、治療の進み具合が違ってきませんか?

 一般的には、子どもの方が回復力があって、親の治療の方が追いつかないケースが多いです。親自身が過去に虐待を受けていると、長い年月経っている分、治療の時間もかかってしまう。その場合には、子どもが回復しているのに、親がまた子どもを殴ってしまい、子が回復に向かっていたのに逆戻りしてしまうといったイタチごっこになることもあります。親と子どものケアを平行して行う場合、それぞれの回復の程度をみていくことも必要です。

──具体的な治療は?

 「遊戯療法」をやります。まず、おもちゃ、人形などを使って、遊びをさせます。すると、子どもたちは、人形遊びの中で、自分が受けた虐待を再現するストーリーを作ります。

 例えば、ウサギの人形を使って遊ぶ子は「お母さんウサギが、赤ちゃんウサギに毒入りプリンを食べさせる」というままごとをする子がいました。これは、母親から何がしかの苦しい目に合わされていることの表現です。

 「たくさん動物がいる中で、ゴジラが魚を食べている」というのもありました。これは、担任の先生に怒られて不登校になった子でしたが、担任の先生に圧倒されているイメージを表現しています。

 おもちゃや人形を使って表現する時、子どもは自分とは別の物、つまり「人形が虐待されている」と表現するので、自分のことを話すのが苦しいと感じている子や、虐待されている事実を人に話してはいけないと思っていた子でも、心を痛めずに、遊びを通して自分を表現できるのです。

 実はトラウマは、こういった方法で何度もその苦痛だった場面を再現していくことで、それが癒しにつながるのです。再現されたトラウマを、大人が受け入れてあげることが治療になっていきます。

 回復が進むと、「子どもの象が入院治療して、母象の所に帰って来る」などという「治療」をテーマにした話を作ったりするんですよ。とにかく、どんどん表現をさせて、心を解きほぐしていくことがいいのです。(つづく)【野口美恵】



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